(コラム)ばんえい記念の他には無い by地方競馬に行こう!
Posted at 08/03/11 PermaLink»
「地方競馬に行こう!」のlandsliderさんより
寄稿して頂いたコラムをご紹介します。
「ばんえい記念の他には無い」
「歴史」は、数多い僕の不得意科目の中でも、
もっとも忌避したい科目のひとつだった。
多感なころ、その事象の一つ一つに胸を抉られる事に耐えられなかっ
た…、というのは、中二病に犯された僕が、
当時少し気取って考えた言い訳で、ただただ暗記が苦手で
更に億劫だったというだけの怠惰な理由でだ。
それでも、心惹かれた人物はいる。友達に仲間はずれにされていると
思い込んで一人通っていた図書館の片隅にあった
「シャクシャイン」の伝記で 、長じて大学生となり北海道に行った時など、
門別や静内周辺に行っても、競馬好きの癖に牧場見学にはあまりいかずに、
周辺に多い彼の史跡めぐりをよくしたものだった。
彼の人生が紡いだ物語に触れると、強者の弱者に対するありようは今も昔も変
わらないなぁという事を感じる。しかし他方で、弱者が強者にすりよる事で自ら
も強者たらんとした者の末路も示していると思うのだ。
シャクシャインのように、「立ち向かう勇気」と「失敗を恐れない胆力」を
持っていたことが原因で敗北しても必ず後に残るものがあるはずだ、と、とっく
に中二病は卒業したと思っている今でも心のどこかで僕は信じている。
各所に柏の木がそそり立つ十勝の地で、開拓の歴史を伝える諸施設、
各地に残る物語、そして、ばんえい競馬、ばんえい記念に触れると、
若いころに心に刻んだその信念を強く思い出す。
開拓という言葉には夢やロマンがある。しかし、その輝きは、実現の困難さ、
苦労、悲劇と比例するものなのだろう。ばんえい記念も同様、
そこに感じる夢やロマンは、1000キロの重量を曳き二つの障害に挑むそ
のレースの困難さと過酷さと比例している。
だからこそ、そこに立ち向かう勇気と、失敗を恐れない胆力を
僕らは賞賛し感動をするのだろう。それが、ばんえい記念においては、
最後の一頭がゴールするまで、スタンド全体が声をからして声援を送る
という事に現れているのであろう。
繰り返しになるが、立ち向かう勇気と、失敗を恐れない胆力を持って望めば、
たとえ敗者となっても残る何かがある、その証明を、ばんえい記念の
「最後の一頭がゴールするまで…」という毎年繰り返される現象の中に、
僕は強く感じるのだ。
そして、人馬一体となった勇気と胆力のある姿を見せ付けられ、
祭りの後の寂寥感に浸りながら、いつも思うことがある。
現代の世の中は様々な意味で「開拓」の余地に貧しいとされる。
しかし、僕は、その輝きを得るための困難さ、苦労、悲劇を忌避している
だけではないのか…と。シャクシャインを陥れたアイヌのように
強者の側に位置することで偽りの強者たらんとしているだけではないの
か、1000キロのレースに挑んでやろうというような気概が胸に残っていないだけ
ではないのか、実は、それが理由で「開拓」の余地を見逃しているだけではない
のか…。
ばんえい記念が終わると、人馬一体となり懸命に目指したゴールの
はるか前方に夕日が沈む。ここ数年、例え荒天でもばんえい記念が終わると
必ず空が晴れ、沈む夕日を見ることが出来る。
シャクシャインや開拓の労苦を重ねた方々も見たに違いない、
その茜色の空を見ながら、自らを省みる、そんな気分になる。
断言してもいいだろう、そんなレースは、「ばんえい記念の他には無い」。
地方競馬に行こう!筆者
landslider
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